待たれる熱波の定義

欧米では近年、熱波による干ばつ・山火事などの自然災害が頻発しており、日本でも同様の事態への備えが急務となっている。具体的には、熱波を予測し、熱波の発生の1~5日前には天気予報で公表することが必須であろう。熱波はヒトの心身に健康被害を及ぼすだけでなく、農業・畜産業への深刻な打撃、さらには干ばつや山火事といった大規模な自然災害を引き起こす恐れもある。日本においてもすでに熱波と見られる現象が発生しており、猛暑日予報と熱中症対策の呼びかけだけではとても十分とはいえない状況に直面している。

まずは熱波の基準を設けること。米国では熱波(Excessive Heat Events(EHE))は、「当該地点におけるその季節の平年値と比較して、気温が顕著に高く、かつ(または)湿度が平年を大きく上回る夏季の気象状況」として定義される[1]。暑さは気温、湿度、雲量などの変数に左右される。よって熱波の判定基準は、地理的条件および季節的要因に応じて相対的に変動する傾向がある。つまり札幌、東京、名古屋、大阪、福岡および那覇では熱波の基準は各々異なる。その結果、「最高気温が約32℃以上の夏日」といった、固定的かつ一律の絶対基準が設定される可能性は低い。例えば、35℃の気温は、ある都市では異常高温と見なされる一方で、別の都市や町では平常の範囲内である場合がある。これは、温暖な地域では暑熱順化により住人が暑い気候に適応できていることの証左といえよう。

日本では、現時点で、熱波を示す数値上の定義がなされていない。熱波の定義には、さまざまな考え方や基準が存在する。例えば、過去30年間[2]の同日もしくは一定期間の最高気温データに基づき、その閾値(例:パーセンタイル値)を上回る予想最高気温が観測される場合に、熱波の発生を発表するなどの基準を設けることで、地域ごとの気候差を反映した柔軟な対応が可能となる。さらに、この閾値を上回る状態が例えば2日以上連続して続く期間を「熱波」と定義する。何パーセンタイルで何日以上なのか、明確な指標の開示が望まれる。熱波の発生頻度、期間、季節の長さ(その年の最初の熱波から最後の熱波までの日数)および強度(閾値を超えた期間の平均気温の値)に関する時系列の変遷と傾向は、熱波対策を講じる際にきわめて重要な情報となる。

 

[1] US EPA, “Excessive Heat Events Guidebook”, P9, See https://www.epa.gov/sites/default/files/2016-03/documents/eheguide_final.pdf (as of 2025/8/18)

[2] US EPAでは各都市の7~8月の30年間(1981–2010)の気温をベースに算出している。See US EPA, https://www.epa.gov/climate-indicators/climate-change-indicators-heat-waves (as of 2025/8/15)